④ 【包括的な予防的ヘルスケアの一環としてのワクチン】

【包括的な予防的ヘルスケアの一環としてのワクチン】
・予防接種の必要性を定期的に評価することは、生涯に渡るヘルスケアを包括的に考えるための一要素に過ぎない。
・ペットや飼い主の年齢、種類、生活様式、環境、旅行等を加味した予防的ヘルスケアを用意し個々の患者の定期的な(通常年1回の)健康診断を行う必要がある。
・予防接種の相談は、健診での訪問内での重要な部分要素となっており、その他にも内部/外部寄生虫の検出/治療および予防、節足動物媒介性疾患や人獣共通感染症の予防、デンタルケア、栄養アドバイス、行動評価など個々のペットに合わせた相談が必要となる。
・成犬や成猫では、一部のコアワクチン(イヌのCDV、CAV、CPV、ネコのFPV)の追加接種の決定は、血清学的検査を通して検討することができる。
・予防接種代わるこの方法を実践している獣医師の中には、一部の飼い主に非常に感謝してもらえると報告するものもいる。
・ここについては、後のセクションでより詳細に議論をする予定である。

 

・高齢のイヌネコにおいて、特別に強力なコアワクチン追加接種の計画がガイドラインに沿って必要になるというエビデンスは殆どない。
・多くの高齢のイヌネコではコア(MLV=弱毒生)ワクチンに関する持続する免疫記憶が持続しており、単回の追加接種後に迅速な防御が得られるというエビデンスは存在する。
・一方で、高齢のイヌネコでは過去に遭遇歴のない新しい病原体や抗原に対する一次応答の立ち上がりがそれほど効果的でない可能性がある。
・最近(2023年)の研究では、3年より長い期間ワクチンを接種していなかった高齢犬は、1-3年の間にワクチンを接種した高齢犬と比較し、CDVやCADに対する防御可能な抗体価を持つ可能性が低いことがわかった。
・これらの高齢犬の再接種後の血清学的反応は調査されていなかった。
・これらの知見に基づき、高齢のペットへの追加接種は3年に1回またはそれ以上の頻度での実施が推奨される。

 

・英国のイヌネコを対象とする研究では、旅行のために初めて狂犬病ワクチンを接種された高齢のイヌネコの多くが、法的に要求される抗体価に達していないことが明らかとなった。
・若い動物ほど予防接種が成功する可能性が高かった。

 

医療記録の文書化について
・ワクチン投与時には、以下の情報を患者のカルテに常に記録すべきである。
・ワクチン投与日
・ワクチン投与の実行者の身分(氏名、イニシャルまたはコード)
・ワクチン名、ロット番号または製造番号、有効期限および製造者
・解剖学的な接種部位と投与経路。
剥がせるワクチンラベルおよびペットの輪郭をカルテに押すスタンプを使用することで、このタイプの記録管理が容易になる。国によっては義務付けられている。

 

・有害事象は習慣としていかなるものでも記録すべきであり、今後すべてのスタッフメンバーに注意するよう伝えるべきである。
・インフォームド コンセントは、適切な情報がクライアントに提供されたこと、また(“適用外使用”の場合などには)クライアントがその過程を承諾したということを証明するために医療記録として文書化すべきである。
・少なくとも、この記録はワクチン接種の前にリスク&ベネフィットについて話あったと示すものでなければならない。

 

・VGGは、ワクチン接種証明書に接種日の記載だけでなく、その個体がワクチンにより将来何年ほど防御されると期待されるかを記載する欄を用意した方がいいと考える。
・そうすることで、飼い主やイヌネコを管理する事業者の混乱を解消する援助をすることができるだろう。