③ガイドラインの目的

【WSAVA予防接種ガイドラインの目的】
・本ガイドラインは、各国の小動物獣医師学会から個々の獣医師まで幅広く、アップデートされたイヌネコの予防接種に関する科学的なガイドを提供することを目標としている。
ガイドラインでは、いくつかの地域に対し強い提言を行うが、これは規定のルールとなるわけではない。
・多国の100人以上もの連携メンバーや、WSAVAに関与する20万人以上の獣医師全員に適用できるルールを作成することは実質不可能であろう。
・WSAVAメンバーを通じてみても、感染症の流行については各国やその地域の地理的条件などから限りない差異が存在する。感染症の流行がどれだけ把握されているか、利用可能なワクチンの種類、イヌネコが放浪しているか管理下かであるかの割合、各々の経済状況、ペットに対する社会的態度などその差異は限りない。
・ある国や地域で獣医師が非常に重要とするワクチンが、地域によっては不必要かつ力にならないことも起こりうる。或いは、単純に利用可能でないだけかもしれない。
・それぞれの地域的な流行状況やその他要因など、それぞれの獣医師などが把握する背景などに合わせ、いかにこのガイドラインを読み議論し、適応させるられるかは、その国家や地域の学術指導者、そして各獣医師に依存している。そして、その国や地域によっては、近年既に実施されている。
ガイドラインに沿って実践する際に、いくつかの推奨事項が各製品概要のリーフレットやデータシートの情報に反してしまうことを気にする者もいる。
・例えば、成熟個体に製品リーフレットに記載されている回数よりも接種頻度を少なくする、12-20週齢の個体に追加接種を行うなどした場合、実践者に深刻な批判が与えられてしまうであろうと心配する人々がいる。
・ただこれは一般的なケースではない。実践者はガイドラインに沿う上でその障壁となる地域や国の規制がある場合には、まずそれが最新の状態であるかどうかを確かめるべきである。
・もしその規制が現在の科学的根拠に反するものと確かめられた場合には、その地域や国の獣医師機関は規制を改訂することを検討したほうがいい可能性がある。

・各製品のリーフレット/データシート/製品概要は、ワクチンの規制パッケージの一部であり法的文書である。
・この文書は製品の安全性や有効性に関して詳細情報を提供し、適切な予防接種後に期待される最短の免疫持続期間(DOI)についても言及している。
ガイドラインでは、製造会社から提供される最短のDOIだけでなく、イヌネコのワクチン導入から得られるすべての科学的根拠を基に判断するようにしている。
・そのためガイドラインでは、国によってはその期間が1年間とされるコアワクチンのDOIに対し、3年に1回かそれより少ない頻度での追加接種を提案する可能性がある。
ガイドラインではしばしばその製品の添付文書の情報と異なる内容を提言されているが、獣医師は飼い主に説明の上、製品の添付文書の推奨事項から逸脱する同意を得られれば、基本的にはガイドラインに沿ったワクチンの使用が可能となる(“適応外使用”)。
・医療記録としてインフォームドコンセントの文書がある方が望ましい。
・獣医師がラベルの推奨事項に従うことが政府によって強制されている場合、それは起こりうるレアな例外となるだろう。
・ゆえに製品の添付文書から逸脱するために、獣医師の自由を規制するような地域のルールに関する知識を持つことは重要である。
・また会社の代表者である場合には、獣医師が製品の添付文書に従うよう指導し続けることが一般的であるということを、心にとどめておくべきである。
ガイドラインの提案に沿うことが好ましい場合であっても、しばしば法律によってその指導が必要となる。

・本ガイドラインは、可能な限りは発表された査読済みのエビデンスに基づいているが、やむを得ず避けられない場合には、未公開または査読のされていない科学的なエビデンスや専門家の意見に基づくことがある。
・1つの文書において扱われる資料の幅が驚くほど広いため、本ガイドライン作成のために適する唯一の方法としてナラティブレビュー形式が再び採用された。
・この方法と同じ形式が、すべての他の国際的な伴侶動物予防接種ガイドライン作成チームにおいても採用されている。
・VGGでは、今回のアップデートを計画する際にシステマティックレビュー形式や、Delphi法に基づきコンセンサスに達するアプローチを使用することを検討した。
・これらのアプローチは1つの文書でカバーする資料の幅広さと、執筆チームの規模を考慮し、適応できないだろうと早急に判断された。
・それにも関わらずこれらの提言は、考慮し見つけ出された強力な科学的根拠に基づいている。

・この文書の目的は、イヌネコのワクチン学における現在の問題点に対処し、ワクチンの合理的な使用を強化するための実践的な道筋を獣医師やその団体に提供することである。
・VGGの最も重要なメッセージは、下記文章にて簡潔にまとめられる。
 ・私たちは、すべてのイヌネコへのコアワクチン接種の実施を目指すべきである。
 ・個々のペットのライフスタイルや感染症の流行地域を熟慮し、選ばれたノンコアワクチンを推奨すべきである。
・コアorノンコアワクチンは適切に保管され接種されるべきであり、ライフスタイルや旅行先に関わらず、ペットの一生を防御できるように必要最低頻度でのみ使用する。