②序文

【序文】
・WSAVA VGGは、世界中の獣医師の力となれるようにイヌネコのワクチネーションガイドラインを作成するため2006年に招集された。
・過去のガイドラインは2007年、2010年、2016年に作成された。
・過去のガイドラインは数百回におよぶ査読論文への引用、出版後のウェブサイトより数万回ものダウンロードがされてきた。
・本ガイドラインはアップデートバージョンである。
ガイドラインの推奨事項はわかりやすく、かつ免疫の基本的原理に沿うべきものであり、詳細な部分が一部の国や地域に適応できない可能性について、VGGは認識している。
ガイドラインは、獣医師の判断材料として幅広く使用されることを意図しており、標準治療に影響をきたすものではない。
・世界的に適用可能なガイドラインを作成したいという野望があったため、ガイドラインの推奨事項は幅広く、かつ免疫学的基本原則に沿わなければならないことをVGGは認識している。
・イヌネコのワクチンや予防接種に関する推奨事項の細かい部分は、いかなる地域においても適用できるとはならないかもしれない。
・既に国内や地域内にてガイドラインが作製されているような場合は、WSAVAのガイドラインは既に利用されているガイドラインほどは適切ではないかもしれない。
・例えば、イスラエルではイヌネコ両方で予防接種のガイドラインが作成されている。
スリランカでは、イヌの予防接種ガイドラインが利用可能となっている。
アメリカ動物病院協会(AAHA)や全米猫獣医協会(AAFP)は特に北米に関するものとしてネコの予防接種ガイドラインを作成した。
・AAHAはまたイヌの予防接種ガイドラインも同様に作成した。
・欧州猫疾患諮問委員会(ABCD)はネコの予防接種ガイドラインをヨーローッパの大部分に関するものとし作成した。


・これらや他のガイドラインの重要な特徴はワクチンをコア、ノンコア、非推奨とカテゴリー分類しているところである。
・これらの中でも最新のガイドラインとして、コアワクチンの定義は自己矛盾を避けるように、また明確になるよう調節されてきた。
・その結果的にワクチン種のカテゴリー分類にたどり着いた。
・コアワクチンは、居住地や旅行先での生活様式や地理的条件を踏まえた上ですべてのイヌネコが受けるべきものである。
・コアワクチンは世界中のイヌをCDV、CAV、CPVから防御するものである。
・コアワクチンは世界中のネコをFPV、FCV、FHVから防御するものである。 
・また、イヌネコどちらであっても、流行地域であれば狂犬病ウイルスのワクチンはコアであると考えるべきである。
・イヌのレプトスピラ症はもう1つの生死にかかわる人獣共通感染症であり、世界に広く分布している。


・イヌレプトスピラ症のワクチンはノンコアワクチンとして過去のガイドラインでは分類された。
・イヌレプトスピラ症が発生している地域において、血清型が既知のものでありそれに適応するワクチンが利用可能である場合、それら地域ではすべてのイヌに対しレプトスピラのワクチンをコアワクチンとして考えることを強く推奨する。
・FeLVウイルスはその罹患率や死亡率から、すべての地域ではないが世界の多くの国で現在も重要となっている。
・FeLVが流行する地域、あるいは不安が残る地域では、1歳未満の若齢猫や、外出可能な成猫、或いは外出可能なネコと共に生活する成猫に対し、FeLVワクチンはコアワクチンと考えるべきである。


・ノンコアワクチンは(屋外飼育-室内飼育、多頭飼育といった)地理的状況や生活様式によって、その動物がコアワクチンに含まれない感染症接触するリスクが存在する場合にのみ、強く推奨される。
・非推奨ワクチンは科学的な根拠の不足から、それら地域での使用が推奨されるかどうかを判断することができないワクチンである。


・最新版である本ガイドラインにおける基本構造は過去のガイドライン(2016年版)と大きくは変わらない。
・しかしながら、広範囲にアップデートが為され、多数の新しい引用文献が含まれている。


・具体的な変化として、以下の点が挙げられる。
①     “コア”ワクチンの定義を改訂し、この変化がなぜ有用化についても説明がされている。
②    移行抗体(MDA)に関する新しいセクションがある。
③    イヌネコ臨床ワクチン学に関する現代の、そして最新のトピックを更新した。
④    “ワクチンの型”についてのセクションをアップデートした。
⑤    “シェルターや保護施設におけるワクチン”について、作成しなおした。
⑥    過去に取り上げられていた“受動免疫”に関するセクションを削除し、よりワクチンによる予防について焦点を当てることに重きをおいた。
⑦    新しい参考文献を多く取り入れて、古い参考文献を取り除いた。
⑧    2016年版ガイドラインで用いられた、エビデンスをEB1~EB4で付すエビデンスベースの使用を中止した。EB2のエビデンスは、動物用ワクチンの認可に関する規制パッケージの一部として提出された、未発表の商業的にセンシティブな研究について使用していた。EB3のエビデンスは、寄生パッケージの一部として、提出されなかった類似の研究について使用していた。過去のWSAVAガイドライン中にてEB2やEB3の参考文献が繰り返し引用されることはなかった。
⑨    若齢のイヌネコのコアワクチン接種について、12カ月齢 - 16カ月齢まで待つのではなく、26週齢以降での接種を推奨することについて、更なる議論が行われた。
⑩    前回のガイドライン以降に発売されたワクチンの情報についても記載した。
⑪    ネコの予防接種のための解剖学的部位についてさらなる検討を行った。
⑫    よく寄せられる質問(FAQ)についての新しい一覧表を作成した。